「ヒットラー 最期の12日間」

ドイツが戦後初めて正面からヒットラ−を描いたとして、欧米で大評判になった映画。渋谷のシネマライズで観ました。

ディテ−ルの積み重ねで「妄想の帝国」が崩壊していく様子を描き、ヒットラ−のみならず、周囲の人間たちの狂気と錯乱をもあぶり出してみせます。ヒットラーの周囲には知的な人間も少なくなかったという、意外な事実もよくわかります。

最大の悪役を等身大に描くことで、ヒットラ−と私たちとをつなぐ回路を示し、悪の権化として思考対象からはずされてきた問題を、今一度俎上に乗せることに成功しています。つまりヒットラ−は人間の姿をしたモンスタ−なのではなく、人間そのものであり、私たちもああなりうる可能性があるということですね。

しかも、私たちはこのような狂気を、現在もなお目の当たりにしています。ボスニアやルワンダで行われた民族浄化は、悪夢がまだ続いている現実を明らかにしました。ヒットラーのような人間は、条件さえ揃えばいつでも登場します。ボスニアにもルワンダにも小ヒットラーがいました。そういう意味では、極めて普遍的なテ−マを扱った映画といえるでしょう。

また、多くの人々が妄想の帝国を率いる絶対者を支持したことは、現代にも通じる社会病理です。最近は、「毅然とした姿勢で」強硬な発言をする政治家が好まれるようですが、こういうのが危ない。民主主義社会は、柔軟な対話に支えられているのですから。

日本人にとっては、自国の過去を顧みるのに最適の映画。面白いし、必見です。23日からは新宿武蔵野館でも上映されるそうです。

なお、私ごひいきのトーマス・クレッチマンも出ています。「戦場のピアニスト」で、主人公をかくまうドイツ人将校を演じていた俳優。旧東ドイツ出身のイイ男です(笑)。
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by MYP2004 | 2005-07-22 00:17 | リビングから見た社会
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