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靖国神社参拝強行と女性・女系天皇反対に見る、「唯一無二の美しい日本」

皇室典範改正をめぐる混乱が、靖国神社参拝をめぐるそれと似てきているようです。

靖国問題について言えば、かつて軍国主義のシンボルであったという「常識」を、「小さな島国が欧米列強に脅かされながら、みんなで団結して頑張ってきた」という、遅れてきた近代化のナショナリズムが押しのけている状況です。

一方、皇室典範改正問題では、「万世一系」という建国神話が歴史的事実を覆い隠し、それに少なからぬ人々が寄りかかろうとしているように見えます。天皇制の歴史的経緯についてよく知らなかった人が、初めて男系の意味を知り、それに共感を寄せていくところが靖国問題にそっくり。

両者に共通しているのは、他の国とは違う「唯一無二の美しい日本」を志向しているところ。そして、それに自分を無意識のうちに重ね合わせていくところかな。

靖国神社は、「国のためにみずから進んで命を落とした人を祀る神社」ではなく、「国民を騙して、有無を言わせず戦争に駆りたてた軍国主義のシンボル」。つまり、戦争遂行の精神的支柱だったわけです。これが議論の余地のない歴史的事実であり、戦争体験世代ならみんな知っていることです。

でも、こういう歴史的事実を共有していないと、「国のために命を捧げた人に感謝するのは当然」という俗論に引っかかりやすい。そもそも、恣意的な論理の積み重ねで歴史的事実を葬り去るのは簡単なことなのです。アポロ11号の月面着陸も南京虐殺も、ユダヤ人虐殺もなかったことにできますよ、「事実そのものを疑う」きっかけさえつくれば。

天皇制は明治以前、しばしば政治的陰謀を巻き起こしながら、形式的には存続してきたというのが歴史的事実。ほとんど忘れられていたような時期もあったし、「万世一系」などという大層なものじゃなかった。これ、日本史で勉強しましたよね。それなのに、「「純粋な血によって連綿と受け継がれてきた美しい日本」の物語が、なぜ今「再発見」されなければならないのか。

国民国家形成時に、欧米列強と肩を並べるために創られた物語が、なぜ今必要とされるのでしょう。女性・女系天皇を認めることで、何が失われると恐れているのか。本来、「日本とは何か」という絶対の答はないはずなのに。国というものは常に変化し続けているのですから。アメリカもフランスも同じです。

それにしても、こういう「日本とは何か」という問い方の、何とも脆く狭いことか。国のアイデンテティーは過去に退くのではなく、未来志向で考えたいものです。イスラムとの共存に悩むEUは、もっと真摯で現実的な知的問いかけを行っていますね。

例えばブラウン財務相は、イギリス人であることをこう定義しています。「寛容と自由を信じること、市民の義務を負うこと、フェアプレ−精神があること、新しいものを受け入れること」。一方我が国では、靖国神社参拝の強行と女性・女系天皇の拒否に、それを求めている。あまりと言えばあまりではないでしょうか。 by G2
by MYP2004 | 2005-11-28 21:03 | リビングから見た社会
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